日本画の道具

このページでは日本画で使用する様々な道具について解説します。
まずは、歴史と現代をつなぐ絵の具と道具。日本画に必要な道具多いですね!

画材

理想の色や形を描くため、実に様々な種類の画材が生み出されました。
石や土、貝など自然の恵みを使って描かれることも多い日本画は、
それ自体が日本の風景といえるでしょう。

岩絵具

日本画を描く際に用いる顔料で、天然の鉱物を砕いて精製したものです。
岩絵具は粉砕した時の粒子の大きさで14級に分級されています。
粒の大きいものから順に1番、2番と数字が割り振られており、一番細かい14番は淡い色で白っぽいので白(びゃく)と呼ばれます。一般の日本画材料販売店では8番くらいから取り扱っていることが多く、「天然岩絵具」「新岩絵具」「合成岩絵具」の三つに区分されて流通しています。

※日本画といえばコレ!でも、近世までの日本絵画で用いられてきた色材がすべて岩絵具ではありません。

膠(にかわ)

古くから用いられている接着剤のひとつです。
顔料を紙や絹など(基底材)に接着させる役割や、明礬(みょうばん)を加えてドーサ液をつくり、基底材の滲み止めに用います。動物の皮から精製されたもので、三千本膠、粒膠、鹿膠、兎膠などの種類があり、水に溶かして使います。液状のものも市販されています。

胡粉(ごふん)

白色系顔料です。主成分は炭酸カルシウムで、イタボガキやハマグリなどの貝殻を風化させ、砕いて精製してつくります。上胡粉、並胡粉などに分けられ、上胡粉ほど純白に近く、明度が高いです。使用するときは空擦りをしてから膠で溶きます。

※現在では貝殻胡粉のことを指しますが、奈良時代から鎌倉時代頃までは鉛白のことを指しました。

水干(すいひ)絵具

天然の土や貝殻などを粉砕して水簸(すいひ)精製した絵具や、有色の顔料を胡粉や白土などの体質顔料と混合した顔料があります。現在では科学合成されたものも多くあります。使用するときは空擦りをしてから膠で溶きます。

顔彩

顔料やレーキ顔料に膠やアラビアゴム、水飴、砂糖などの固着材を練り合わせて固形にした絵具です。水を含ませた筆で溶きおろして使用します。透明度が高く、絵具の伸びもよいです。

※角皿に入ったものを顔彩、丸皿に入ったものを鉄鉢といいます。

東洋絵画の最も代表的な描画材料です。固形墨は松の木や、植物の油を燃やした煤を膠で練り固め、木型に入れて成型した後に乾燥させたもので、松煙墨と油煙墨があります。

松煙(しょうえん:青みがかった墨色が特徴)
油煙(ゆえん:松煙よりも粒子が細かく、茶色がかった墨色が特徴)

今日まで継承されている固形墨の製墨技術が発展したのは唐代頃といわれ、正倉院にも伝存します。

金属を薄くたたき延ばしたものです。金や銀のほか、さまざまな金属が箔に用いられています。銀箔を化学反応させたものや、アルミニウム箔などに着色加工を施したさまざまな色のものもあります。

金箔や銀箔、プラチナ箔は延金を澄打紙に挟んで1万分の3mmまで打ち延ばしたものを、さらに箔打紙に挟んで1万分の1mmまで打ち延ばします。

基底材

支持体ともいいます。日本画は古くから岩石、土壁、板、麻、絹、紙など、膠で顔料が定着するさまざまな素材に描かれてきました。

和紙

洋紙に対してできた言葉で、麻類、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)、などの靱皮繊維を原料にした、日本で古くからつくられてきた紙の総称です。

麻紙(まし)

紙の表面はざらつきがありますが、厚手で丈夫です。雲肌麻紙、白麻紙、土佐麻紙、などの種類があります。

楮紙(こうぞし)

揉んでも破れないほどの粘り強さがあり、表面はやや粗さがあります。美濃紙や細川紙などの種類があります。

三椏紙(みつまたし)

繊細で光沢のある平滑な紙として広く用いられています。紙幣や書道用の紙にも使われています。

雁皮紙(がんぴし・鳥の子紙)

繊維が短いため、紙の表面が滑らかで独特の光沢があります。

絵絹

日本画を描くための糸密度が均整で緻密に織られた絹の布です。絹枠に張って、ドーサを引いて使います。木枠に合った大きさを用意します。

木製パネル

日本画を描く準備として必ず行う作業が「水張り」です。紙に描く場合は木製のパネルを使用することが多いです。シナベニヤなどで作られています。水張り用のパネルや紙は、作品の大きさに合わせて用意します。

絹枠

絹に日本画を描く際に、絹を張るための枠です。木製のもので、こちらも作品の大きさに合わせて用意します。

日本画を描くときの重要な道具です。消耗品のため、穂先が傷んできたら新しい筆を用意するようにします。

即妙筆

主に彩色に使う筆です。
上質の羊毛と猫毛を使用しているため、絵具の含みがよく柔らかい線が描けます。

削用筆

主に主線を引くための筆です。
上質の羊毛にイタチの毛を使用しているため、腰が強くて筆先も利き、硬い線や柔らかい線が描けます。

面相筆

繊細な描写をしたいときや、細い線を引くときに使う筆です。
細くて描きにくいのを保護するため、筆の付け根が二段になっているのが特徴です。
「面相筆」の名は、人や動物の面相を描くときによく使われることから付けられました。

隈取筆

主に墨や絵具をぼかすために使う筆です。ぼかし筆ともよばれます。
筆先が丸く、イタチや山羊毛を使用しているため含みがよいです。

連筆

筆を何本も連ねた形で、刷毛と同じく絵具を均一に塗るための筆です。
刷毛よりも絵具を多く含ませることができ、強弱のついた面塗りができます。

刷毛

広い面に絵具を均一に塗るための筆です。
様々な幅や毛の刷毛があるので、塗る面積や用途によって使い分けます。

絵刷毛

日本画で使う最もスタンダードな刷毛です。彩色のほかにもドーサ引きや水張りなどにも使用できます。

糊刷毛

糊を塗るための刷毛です。強靭な毛で作られておりとても丈夫です。

撫刷毛

裏打ちなどを行う際に使う刷毛です。張り合わせるものを上から撫でて圧着させるために使います。

水刷毛

水張りや裏打ちなどで、水を広い面積に塗り紙を湿らせるときに使う刷毛です。

筆・刷毛のお手入れ

  1. キャップは開封後は使わないでください。
    毛が蒸れたり傷む原因になります。
  2. ふのりを取ります。新品の筆はふのりで固めてあります。
    ぬるま湯につけながら、ゆっくり指で穂先をほぐしてから使ってください。
  3. 使う前に水を浸透させてください。
    乾いた状態で絵具や墨をつけると色が落ちなくなったり、筆を傷めやすくなります。
  4. 長時間水につけっぱなしにしないでください。
    毛が蒸れて切れてきたり、故障の原因になります。
  5. 使い終わったら、よく水分を取ってしっかり乾かしましょう。

その他の道具

絵皿

絵具を溶くときに使います。

筆洗器

筆を洗うときに使います。

膠さじ

膠液や水をすくうときに使います。

墨をするときに使います。

箔箸

箔をつかみ、持ち上げるときに使います。竹で作られています。

あかし紙

箔を貼り付け、扱いやすくするための紙です。

落款(らっかん)印

書や絵画などに押す印鑑のことです。石や木などに雅号や本名を彫り込んだもので、さまざまな形があります。

※落款とは、「落成款識(らくせいかんし)」の略で、作品が完成した際に作者が署名・捺印することを指します。

朱肉

落款印を用いる際に使います。日本画の朱肉として適しているのは、もぐさに朱を松脂やひまし油と練り合わせた練り朱肉です。一般に市販されているものでも代用できます。

印矩

落款印をまっすぐに押すときに使う定規です。

念紙

本紙(和紙)に大下図を転写するための紙です。
薄い和紙に水干絵具や木炭の粉などの顔料を日本酒、水で混ぜ合わせたものを塗布して作ります。
チャコペーパーを使っても良いです。

水張りテープ

水張りなどで紙をパネルに固定するときに使います。

でんぷんのり

水張りなどで紙をパネルに固定するときに使います。

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